統合失調症について

統合失調症のイメージ

統合失調症とは、考えや感情(こころ)、行動をまとめていく力が長期にわたって低下してしまう病気です。その原因は脳の機能異常にあると考えられています。
日本での統合失調症の患者数は約80万人といわれ、生涯のうちに統合失調症にかかるのは人口の約0.7%、100人に1人弱と、決して少なくない数字です。
10歳代後半から30歳代という、思春期から青年期に多く発症するとみられています。

統合失調症は、早期の発見、早期の治療で、発症を遅らせたり、重症化を防ぐことができる病気と言われています。
患者様本人、またはご家族が見て、少しでも、以下のような予兆を感じたら、お早めに専門医にご相談ください。

  • 誰もいないはずだが、誰かに見られている気がする
  • 自分の心が誰かに読まれている気がする
  • どこからか声が聞こえてくるような気がする
  • 誰かが自分に危害を与えようとしている気がする
  • 経験したと思っていることが、現実なのか空想なのかわからなくなることがある

このほか、夜眠れない、朝起きられない、不安や抑うつ症状がある、といった場合も、その状態が続くと統合失調症等に移行する危険もありますので、注意する必要があります。

統合失調症の原因

統合失調症の原因は、現在まだ明らかになっていませんが、きっかけとしては、進学・就職・独立・結婚などの人生の中での大きな変化が、発症の契機となることが多いと言われています。
脳の神経ネットワークにトラブルが生じる脳の機能障害と考えられており、ドーパミンの機能異常が存在するとも考えられています。

遺伝的要素が強いとも言われていますが、発症リスクを特に高める遺伝子は特定されておらず、もともと統合失調症になりやすい素因を持った人がストレスにさらされるなどして、発症すると考えられています。

統合失調症の症状

統合失調症の症状は、健康な時には存在しない精神症状が現れてしまう「陽性症状」と、逆に健康な時に存在するべき精神機能が一部欠落してしまうという「陰性症状」があります。これらとは別に、「認知機能障害」もみられます。

「陽性症状」には、聞こえない声が聞こえてしまう「幻聴」、見えないものが見えてしまう「幻視」、匂わないものが匂う「幻嗅」、間違ったことを信じ込む「妄想」などがあります。さらに「自我障害」と呼ばれる症状が現れることもあります。これは、自分と他人の境界があいまいになり、自分で考えているという認識が崩れ、他人に操られていると感じたり、自分の考えが他人に知れ渡っていると錯覚したり、自分の中に他人の考えが入り込んでくると感じてしまうことです。

「陰性症状」には、表情の変化が減り、言葉や身振りの抑揚が低下する「感情の平板化」、服装や化粧、身だしなみへの関心の低下、勉強や仕事、社会的活動へのやる気が失われる「意欲の低下」などがあります。人付き合いを避けるようになり、家に引きこもるようになることもあります。

「認知機能障害」は、物忘れや集中力の欠如、いろいろなことを一度に話されると理解できない、大事な場面で緊張して失敗する、というようなことがあります。
このほか、考えや行動のまとまりがなくなる「解体症状」、自分が病気であることを自覚できない「病識の障害」も統合失調症ではよくみられる症状です。

統合失調症の治療

統合失調症は、当初は急性期として、「陽性症状」が目立ちますが、だんだんと「陰性症状」が目立つ回復期となり、慢性期に至ります。慢性期では活動性や注意力の低下、周囲への無関心といった症状が続き、この間、数年から数十年続く場合もあります。
主な治療は薬物療法と心理社会的な療法を組み合わせて行っていきます。

薬物治療で使われる薬は、「抗精神病薬」と言われるもので、幻覚や妄想などの陽性症状や、意欲低下などの陰性症状、さらには不安、不眠、興奮などの改善に作用するものです。
抗精神病薬には様々な種類があり、従来の「定型抗精神病薬」と、近年主に用いられている「非定型抗精神病薬」があります。
近年は新しい薬がいくつも登場しており、副作用の少ない薬剤もありますし、1~3カ月に1度の注射でよいものもあります。
長期的に適切に薬を用いることにより、病気をコントロールし再発を予防できるようになってきています。

また急性期(陽性症状)に対する薬物治療が重要なのはもちろんですが、陰性症状のあらわれる時期の治療も重要になります。この時期にしっかりと治療をしないと、引きこもりへとなりがちで、社会との接点が少なくなると、さらに病気か進行する可能性があります。
社会に対して引け目を感じてしまうと、引きこもりの傾向がますます強くなってしまいます。

急性期後の治療としては、薬物療法に加えて心理社会療法を行うこともあります。具体的には集団行動に慣れるためのものだったり、就業のための訓練だったりと、生活訓練が中心になります。
「自分は病気ではない」と強く思っている患者様も少なくありませんので、まず患者様自身が病気であるという認識と、治療の必要性をよく理解していただくための、「疾病教育」が、治療へのスタートとなる場合もあります。