自閉症スペクトラム障害について

自閉症スペクトラム障害のイメージ

自閉スペクトラム症は発達障害のひとつで、これまで自閉症、アスペルガー症候群など、様々な名称で呼ばれていたものを、本質はひとつの障害だととらえ、自閉スペクトラム(連続体)と呼ぶようになりました。
国際的診断基準の診断カテゴリーである広汎性発達障害(PDD)とほぼ同じ群を指しており、従来の自閉症、アスペルガー症候群、さらにそのほかの広汎性発達障害も含まれています。

自閉症スペクトラム障害の特徴としては、主に3つあります。

  1. 場の空気を読んだり、相手の心情をくみ取ったりすることを苦手とする、相互的な対人関係(社会性)の障害
  2. 相手の発言をすぐに正しく理解したり、自分の思いや考えをわかりやすく相手に伝えたりすることが難しい、コミュニケーションの障害
  3. その場の変化に適応することが難しく、自分の興味やルールに「こだわり」、行動に偏りがでる

自閉症スペクトラム障害は、最近では増加傾向にあり、100人に1~2人程度存在し、また男性は女性に比べて約4倍多いことが報告されています。

自閉症スペクトラム障害
の主な症状

自閉症スペクトラム障害の症状として現れる特徴は、大きく分けて以下の2つです。

  1. 対人交流およびコミュニケーションの質が異常
  2. 著しく興味が限局すること、パターン的な行動があること

一人でいることが多い、人と目を合わせない、身振り手振りで伝えることが苦手といった対人での問題や、オウム返し(エコラリア、反響言語)、会話のやり取りが難しい、言語による指示が理解できないといったコミュニケーションの問題、さらには常に同じ動きや言葉を繰り返すなどパターン的な行動がある、特定の分野に非常に興味を持ち、その分野に関しては膨大な知識を持つ、などは自閉症スペクトラム障害の特徴的な症状です。

お子様の場合、1歳を過ぎた頃から、「人の目を見ることが少ない」「指さしをしない」「他の子どもに関心が無い」などの兆候が見られます。
対人関係に関連する行動は、通常、急激に伸びていきますが、自閉スペクトラム障害のお子様では、明確な変化が見られないことが多く、言葉を話し始める時期が通常通りでも、自分の興味のあることだけを話し続けたり、それに何時間も熱中したりすることはあっても、他者との会話が成り立ちにくい傾向があります。
思春期や青年期になると、次第に自分と他者の違いに気づいて悩んだり、対人関係で問題が生じたりして、それが不安・うつ症状の合併を引き起こす場合もあります。

自閉症スペクトラム障害の原因

自閉症スペクトラム障害の原因は、現在正確にはわかっていません。
脳機能の障害によって症状がおこると考えられており、その脳機能障害には、遺伝的要因の関与が指摘されています。関連すると考えられる遺伝子は、数多く報告されていますが、いくつかの遺伝子が複雑に関連しあっているため、現時点では、原因遺伝子を完全に特定できていません。

さらに自閉症スペクトラム障害は、遺伝的要因に加えて、様々な環境要因も影響していると考えられています。
その環境要因もはっきりと特定されているわけではありませんが、妊娠初期の喫煙や出生前の有機リン酸系農薬への曝露、出生前・出生後の偏った栄養、妊娠・出生時の親の高齢、妊娠35週未満の早期出産、低体重出生などが関わっている可能性が考えられています

発達障害のところでも述べましたが、「親のしつけ方・育て方が悪い」「親の愛情不足」といった心因論は、現在では医学的に否定されています。

自閉症スペクトラム障害の治療

自閉症スペクトラム障害では、早期に診断をつけることが重要です。
幼児期に診断された場合では、「療育」によって、コミュニケーションの発達を促し、適応力を伸ばすことによって、対人関係などにおける不安が低減され、学校など集団活動への参加意欲が高めることができます。
また保護者をはじめとした周囲が理解することで、接し方も変わり、成長を見守っていく環境が醸成されます。

自閉症スペクトラム障害は、こだわりの強さなどが問題となる場合がありますが、これを周囲が理解し、ある程度は「個性」として認識し、社会への適応がスムーズいけるようにしていくことが大切です。
おかれた環境や周りの状況によっては、大成功する人もいますし、逆に孤立してしまう人もいます。
どちらにしろ、障害と認識されることが抑えられるよう、早期に発見し介入して、継続的な療育や支援を行っていくことが重要になります。

薬物治療という観点では、自閉症スペクトラム障害そのものを治す薬はありません。
しかし睡眠や行動の問題が著しい場合には、薬の服用を行う場合があります。症状を抑えることで、生活しやすくなる可能性もあります。思春期以降に不安・うつ症状が現れた場合には、抗不安薬や抗うつ薬を服用すると改善することがあります。
薬物治療に当たっては、症状の悪化を呼び起こす大きなストレスや、生活上の変化が無かったかなどの環境を、同時にチェックし、その調整をおこなっていくことも大切です。