社交不安障害について
大勢の前でスピーチをしたり、何かの発表をしなければならなかったり、初めての人と会う時など、自分に注目が集まると考えられる場面で、強い緊張や震え、発汗、動悸、めまい、呼吸のしづらさ、さらに顔が赤くなるなどの症状が現れる病気です。
そういった症状を人に見られたくない気持ちが強くなったり(赤面恐怖)、人の視線が怖くなったりすることで、さらに不安が強くなるという悪循環が起こります。その結果、人との社交の場を避けるようになり、日常生活にも支障をきたすようになってしまいます。この状態が続くと、うつ病やアルコール依存症につながる恐れもあります。
社交不安障害の主な症状
社交不安障害では、異常に緊張することで、以下のような身体的症状が現れます。
- 顔が赤くなり、ほてる
- 手足や全身、あるいは声に震えが出る
- 脈が速くなり、息苦しくなる
- めまいがする
- 繰り返し吐き気に襲われる
- 多量に発汗する
- 口、のどがカラカラに渇く
- 頻繁にトイレにいくようになる、逆に尿が出なくなる
上記のような症状の現れ方よって、社交不安障害は、以下のような種類に分けられます。
- 対人恐怖症
- 自分を他人がどう思っているか、他人の評価や眼が過剰に気になり、他人と接したり話をしたりするときに、恐怖を感じ、震えやめまいなどの身体症状が現れる。
- 赤面恐怖症
- 人前に出ると緊張して顔が赤くなり、それを強く不安に感じ、隠したいと思うことでさらに赤面。苦痛が強くなって、人と接するのを避けるようになってしまう。
- 発汗恐怖症
- 緊張する場面では発汗がひどく、それを恥ずかしく思い、人前に出られなくなってしまう。
ハンカチを持たないと落ち着かない。 - 場面恐怖症(場面緘黙症)
- 学校や職場などで人前に出なければならない場面になると、緊張し声が震える、あるいはうまく言葉が出なくなってしまう。
- 書痙
- 結婚式の受付など、人前で字を書く場面になると、緊張や不安を感じて、手が震えてしまう。
社交不安症の原因
社交不安症の原因は、はっきりとはわかっていませんが、近年、社交不安障害を抱える人が人前で話すときに、大脳の偏桃体と海馬の働きが高まるということがわかってきました。
こうしたことから、セロトニンなどの脳内の神経伝達物質のバランスが崩れ、中枢神経系が正常に機能しなくなって、社交不安障害が発症するのではないかと考えられています。
以前は人前に出るのが苦手な性格のお子さんが、思春期になって発症することが多いとされていましたが、現在では社会で中核となる30~40代の大人にも見られるようになりました。会社での会議など、人前で話をしなければならない場面で、突然発症したりすることもあります。
社交不安障害は、あくまで病気ですので、頑張って何とかしようとすると、悪化する可能性もありますので、医師にご相談ください。
社交不安障害の治療
社交不安障害の原因はよくわかっていませんが、抗うつ薬であるSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)や、ベンゾジアゼピン系抗不安薬などの薬が有効であることはわかっており、それらを用いつつ不安や恐怖を抑制して、症状を改善します。
時に震えや動悸に対してβ遮断薬という循環器系の治療薬等を用いることもあります。
さらに今、感じている恐怖や不安が、自分の思い込みに過ぎないことを、一緒に考えていったり、患者様がご自身と向き合うことで、不安や行動を制御していく認知行動療法を行ったりすることで、少しずつ、人前でできることを増やし、日常生活に支障をきたさないようにしていきます。