双極性障害(躁うつ病)について
気持ちがひどく落ち込む抑うつ状態と、逆に気分が爽快で早朝から深夜まで元気に活動でき、積極的に行動する躁状態を繰り返すのが双極性障害で、以前は「躁うつ病」と言われていたこともあります。
しかし双極性障害はうつ病とは違う病気で、治療法も違うため、注意が必要です。
100人に1人程度が発症すると言われ、躁状態にあるときは本人に病気であるという認識がないため、治療が積極的に行われないという問題点があります。
双極性障害にはⅠ型とⅡ型があります。
Ⅰ型は社会生活に支障をきたすほどの完全な躁状態が1回でも見られたことのあるものであり、Ⅱ型はうつ状態があり、完全な躁状態の経験は一度もないが、軽度の躁状態がみられたものです。
Ⅰ型の双極性障害が続くと、社会生活や家庭に破綻をきたすなどの危険があります。また、うつ状態のときは希死念慮(死にたいと思う気持ち)が強くなる傾向があり、自殺の危険もあります。
Ⅱ型は社会生活の上で著しい支障はないもので、本人はあまり気づかず、周りが先に気づく場合も多くあります。
双極性障害(躁うつ病)
の主な症状
双極性障害では、以下のような抑うつ状態と躁状態を繰り返します。
双極性障害Ⅱ型の場合は躁状態が軽い軽躁状態になります。抑うつ状態についてはⅠ型とⅡ型では大きな違いはありません。
抑うつ状態について
- 気持ちがふさぎ込み、一日中辛く憂うつな気分が続く
- すべてのことに興味や関心がなくなり、何をしても楽しくない
- 自責の念にさいなまれる
- 悲観的になり、時には死にたいという気持ちになってしまう
- 体にも症状が現れ、睡眠障害や食欲の変化、倦怠感や疲労感がある
- 気ばかり焦って物事が手に付かない
- 集中力が低下する
など
躁状態について
(Ⅱ型双極性障害の場合)
- ほとんど寝ずに動き回り、家族や周囲の人にしゃべり続け、迷惑を考えない
- 仕事や勉強には精力的に取り組むが、ひとつのことに集中できず、目標を達成することができない
- 気が大きくなり、高額な買い物をして多額の借金を作ってしまう
- 失敗の可能性が高いことに手を出し、社会的信用を失ったり、仕事を辞めなければならなくなる
- 自分に特別な能力があるといった誇大妄想になる
双極性障害では、最初の抑うつ状態、あるいは躁状態の発症から、次の発症まで、間隔があく場合があります。長い場合には5年程度ということもあります。その間は健康な状態ですが、この間に治療をせずにいると、症状が再発し、その間隔もだんだん短くなっていきます。
最終的には急速交代型と呼ばれる状態となってしまうことがあり、こうなると薬も効きにくく、また周りへの影響も大きくなる可能性があります。
双極性障害(躁うつ病)の原因
原因は明らかになっていませんが、うつ病と比べて遺伝的要素が強いと言われています。
加えて、様々なストレスや過労、身体疾患、あるいは性格が影響して発症するとされています。
「うつ病」と比較して、脳の機能や遺伝的要因が大きいと言われています。
それに加え、性格や肉体的、精神的ストレスが誘因となると考えられていますが、その確かなことはわかっていません。
20歳代~30歳代の発症が多い、家族に精神疾患の人がいるなどの特徴があるとされていますが、どんな方にも発症の可能性はあります。
症状が進むと社会生活や家族関係が破綻する場合もありますので、早期に治療を開始することが望まれます。
双極性障害(躁うつ病)の治療
双極性障害の治療としては、薬物療法が基本となります。
その際、注意が必要なのは、双極性障害なのか、うつ病なのかを慎重に診断することです。
双極性障害をうつ病と診断し、抗うつ薬を用いてしまうと、急激に躁状態を引き起こす危険性があるためです。
双極性障害と診断された場合に使用する薬は、「気分安定薬」というものです。
中心的に使用されるのはリチウムで、気分が大きく上下に振れる状態をコントロールすることで、抑うつ状態と躁状態の双方に効果が期待できます。
一方、副作用もあるため、薬の使用にあたっては、服薬が適切かどうかを慎重に判断し、さらに投薬中も血中濃度のモニタリングをしながら、効果と作用を確認していきます。
薬剤としては他にバルプロ酸、カルバマゼピンなどがあります。
躁状態が抑えきれない場合は、抗精神病薬を用いる場合もあります。
この他、「うつ病」と同様に認知行動療法などの心理療法も、双極性障害のもう一つの治療の柱となります。
双極性障害は自然に治るものではなく、長く治療を続けていく必要のある病気です。
どう病気と付き合い、投薬などの治療をしていくか、当院では患者さまひとりひとりに合わせ、お話し合いをし、治療方針を決めていきます。
早期に治療を開始することで、患者様ご本人や、周囲への影響を抑えることができますので、お早目の受診をお勧めします。