高次脳機能障害について
高次脳機能障害とは、主に脳の損傷によっておこる様々な神経心理学的症状をいいます。
損傷を引き起こすものとしては、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血などの脳血管障害、頭部の外傷などがあります。また脳腫瘍や窒息による低酸素脳症も原因となる場合があります。
これらの後に、身体における障害が軽度であったり、ほとんど見られない場合であっても、実は脳の機能に障害が残っていることがあり、それが様々な症状をもたらすことから「隠れた障害」とも言われています。
症状を改善し、社会復帰するためには、早期に診断し、サポートしていくことが重要になる障害です。
高次脳機能障害の主な症状
高次脳機能障害では、以下のような症状が現れます。
- 記憶障害
- 古いことは覚えているが新しいことは簡単なことでも中々覚えられない
- 注意障害
- 大切な用件に対処している時でも、集中が続かない
- 計算障害
- 簡単な足し算、引き算ができず、買い物のときに精算ができない
- 遂行機能障害
- 日常生活や仕事の内容を整理・計画し、処理する一連の作業が難しい
- 地誌的障害
- 道順が分からなくなり、迷子になってしまう
- 失見当識
- 現在地や現在の時間、自分の住所、生まれた日などがわからなくなる
- 失語
- 言葉のやりとりがうまくできず、用件を他人にうまく伝えられない
- 視覚失認
- 見えているものが何か理解できず、混乱してしまう
高次脳機能障害の原因
脳は、ものごとを理解したり、記憶したり、時間や空間を把握するなど、生活にかかわる複雑なことを理解・コントロールし遂行していく重要な役割を果たしています。
高次脳機能障害は、脳血管障害や頭部外傷などにより、脳にダメージが与えられることで、ダメージを受けた部分が機能しなくなるなどし、様々な症状が現れます。
高次脳機能障害の治療
高次脳機能障害の治療では、現在有効な手術療法や薬物療法は確立されておらず、主にリハビリテーションを行って、社会復帰を目指すこととなります。
リハビリテーションは、一度低下してしまった高次脳機能を徐々に改善することが期待されます。
リハビリテーションは各患者様の症状に合わせて、次のような内容を行います。
- 障害されている機能を高め、もとの状態に近づけるためのリハビリテーション
- いま保たれている機能を活用し、障害された機能の補い方を身に着けるための訓練
- いまの機能で日常生活の支障を少なくするための、環境整備のアドバイス
リハビリテーションを行っていくと、多くの場合、発症後1年くらいまでの期間は改善の状況が著しく、その後は改善のスピードが緩やかになり、発症後2年程度経過してしまっていると、症状はほとんど固定してしまうと言われています。
ですので、リハビリテーションはなるべく早期に、適切に開始することが重要であり、社会復帰への可能性を高めますので、いち早く高次脳機能障害を見つけるための診断を受けることが大切になります。