パニック障害について

パニック障害のイメージ

パニック障害は、何の前触れもなく、激しい動悸や発汗、頻脈、震え、痺れ、息苦しさ、胸部不快感、冷や汗、めまいといった症状が現れ、大声で叫びたくなったり、じっとしていられなくなったり、さらには「このまま死んでしまうのではないか」と思うほどの強い不安感や恐怖感に襲われる、いわゆる「パニック発作」が特徴の病気です。

人はもともと、大災害や命を脅かすような敵に遭遇したときに、パニック発作と同様の身体反応が起こります。
こうした反応は、災害や敵から逃れるために体に備わったものですが、この発作が、運転、公共交通機関の利用、人混みに入るなど些細なことや普段は何でもないと感じるような時に、突然起こってしまうのです。

パニック障害の原因

最近の研究などから、パニック障害には、脳内神経伝達物質(脳内ホルモン)、とくにセロトニンとノルアドレナリンが関係していると考えられています。
セロトニンは、ほかの脳内神経伝達物質の情報をコントロールし、精神状態を安定させる働きがあります。
またノルアドレナリンは、不安や恐怖感を引き起こし、血圧や心拍数を上げる働きをします。
これらのバランスが崩れ、パニック障害が発症するとみられています。
およそ100人に3人程度の比率で罹るという、誰にでも発症する可能性のある病気です。

当初は救急車で運ばれる場合もあったり、循環器科や呼吸器科にかかったりしますが、検査をしても何も身体的な異常が見られず、周りから理解されなくなる場合もあります。
パニック障害では、こうした「パニック発作」に加え、「予期不安」と「広場恐怖」の3つの症状が見られます。

「予期不安」は、パニック発作がまた起こるのではないかという不安を持ち続け、さらにその発作が心臓発作など重大な結果に結びついてしまうのではないかという、パニック発作に対する強い不安感・恐怖感を抱くものです。

また「広場恐怖」は、広場に限らず、乗り物や人混み、行列に並んでいるときや橋の上、高速道路など、「発作が起きた時、そこから逃れられないのではないか、助けが得られないのではないか、恥をかくのではないか」と不安や恐怖を覚えるもので、外出が恐怖になり、仕事や日常生活に支障をきたし、引きこもりがちになってしまうこともあります。

パニック障害の治療について

まず重要なのは、「パニック障害の発作では決して死ぬことはない」ということです。この事実をしっかりと認識し、自分に言い聞かせることが、治療のスタートラインになります。
症状を軽減する薬物治療としては、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)があります。これは神経伝達物質の一つであるセロトニンの働きを増強するものです。セロトニンの働きが不調になると、不安を感じたり、意欲が低下したりします。それを防ぐことで、パニック障害を改善します。
他にも抗不安薬がしばしば用いられます。

また、精神療法的な治療も効果的であると言われています。
パニック障害では、まず、現在のご自身の状況や、これまでの人生を見つめなおしてみる、という作業が大切になります。
パニック障害の方は、その心のどこかに「孤独」をお持ちの方がほとんどです。家族や友人に囲まれていれば孤独ではない、というわけではありません。
当院では患者様に寄り添って、こうした心の作業を一緒に行っていき、患者様ご自身をいたわれるようになることで、治療を進めていきます。

こうした精神療法や、薬物療法で辛さが和らぎ、発作が軽減されるようになったら、徐々に外出など、苦手なものに慣れるようにし、通常の日常生活や社会生活への復帰を目指します。
その際は、決して無理はしないことが大切です。ご相談の上、慎重に進めていくことが治療においても重要です。