アルコール依存症について

アルコール依存症のイメージ

アルコール依存症は、長期間にわたる多量な飲酒が原因となり、次第に飲酒の制御が困難となる病気です。
それにより身体的、精神的、さらには社会的な問題や悪影響が現れますが、それでも飲み続けてしまい、放置しておくと次第に思いやりや誇りといった人間らしさを失い、周囲の人からも疎まれ、自身の健康は勿論のこと、仕事や家庭までも失ってしまいます。
それでもまだお酒を断つことができない、というのがアルコール依存症の怖さです。

このアルコール依存症は、意志の弱さや性格の傾向性によるものではなく、長期間にわたり過剰なエチルアルコールという依存性のある薬物を、摂取し続けたことによる病気ですので、疑いのある場合は、医師の診断をもとにした、しっかりとした治療をする必要があります。

アルコール依存症の主な症状

アルコール依存症の症状としては、精神的依存、身体的依存の症状が現れ、それにより精神的、身体的に様々なダメージを受けたことによる症状や病気があらわれます。

精神的依存

最初はストレスや不眠を解消するために飲酒していたものが、長期間にわたる飲酒で、アルコールに依存し、より強い飲酒への欲求と、その欲求に従ってしまい、飲酒をコントロールできない状態に陥ってしまいます。
それにより、以下のような症状がでてきます。

  • ほぼ毎晩、晩酌をし、深酒をする
  • 休日には明るい時間から飲酒してしまう
  • 子供や配偶者が学校や仕事に出かけた後に飲酒する
  • 飲み始めると抑制ができず、つい飲み過ぎる
  • 手元に常にお酒がないと不安になる
  • 数時間ごと、断続的に飲酒してしまう
  • お酒に酔った勢いで寝付くが、お酒が切れてくると途中で目が覚めてしまう
  • 朝は特に気分が落ち込み、だるくなる

など

これらは更に、心理的ダメージへと繋がってしまい、うつ病、不安障害、パニック障害などに至る場合があります。
アルコール依存症は、それらの誘因になることが少なくありません。

身体的依存

常にアルコールが体内にある状態が続くと、脳はそれが普通の状態だと認識し、アルコールが抜けてくると、下記のような不快な離脱症状(禁断症状)が出ます。
これらの症状を抑えるために、また飲酒するという悪循環に陥ります。

  • 手のふるえ
  • 多量の発汗
  • 脈が早くなる
  • 高血圧
  • 吐き気
  • イライラ
  • 不安感
  • うつ状態
  • 不眠
  • 幻聴、幻覚

さらに過度のアルコール摂取により、以下のような症状が引き起こされると考えられています。

  • 肝障害(肝炎、脂肪肝など)
  • 胃腸障害(胃炎や下痢、胃潰瘍など)
  • 膵炎や糖尿病
  • がん(特に多いのが食道がん、胃がん、肝臓がん、大腸がん、すい臓がん)

ちなみに世界保健機関は、お酒は60種類を超える病気の原因であり、200種類以上の病気に関連していると指摘しています。

アルコール依存症の原因

アルコール依存症の原因やなりやすさにつながる危険因子と考えられるものに、以下のようなものが知られています。

  • 女性の方が、男性よりも短い期間の飲酒で依存症になる傾向にある
  • 未成年から飲酒を始めると、将来アルコール依存症を発症しやすい
  • 遺伝や家庭環境が依存症へのリスクを高める
  • 家族や友人、地域の環境における飲酒へのかかわりが未成年者に影響を及ぼす
  • うつ病や不安障害などの精神疾患が依存症へのリスクを高める

アルコール依存症は男女関係なくみられ、男性の方が多い傾向にありますが、女性の方が短期間で依存症になりやすいのは、同じ飲酒量でも血中濃度が高くなりやすいこと、女性の方が男性より飲酒による肝障害やうつなどの精神科合併症を起こしやすいため依存症の問題が表に現れやすいことなどが考えられています。

また、胎児期にお母さんが飲酒していた場合、成長期や成人後にアルコールの問題が発生するリスクを高めます。
親がアルコール依存症の人は、それ以外の人と比べ、依存症の発症確率が4倍高くなるといわれています。
これは遺伝の可能性に加え、アルコール依存症の親の飲酒に対する態度や家族間の関係が希薄であることなどの環境も関連すると考えられています。

アルコール依存症の危険因子 | e-ヘルスネット(厚生労働省)

アルコール依存症の治療

アルコール依存症の治療に関しては、最新、久里浜方式集団治療プログラム(GTMACK)のテキストを用いた集団認知行動療法を行っていきます。
これは3か月間の治療プラグラムに沿った専門治療で、医師や看護師、作業療法士など様々な職種がチームとなり、行っていくものです。このプログラムでは、患者様本人がアルコール依存症を理解し、お酒による様々な害を省み、お酒との関係について学んでいきます。

この他、アルコール依存症の患者様が集まって行う「断酒会」や「AAミーティング」を通じてアルコール依存症と向き合うことも行います。
こうした治療の間、その補助として、抗酒剤(アルコールを摂取すると気分が不快になる作用がある)や、抗渇望薬(飲酒欲求が多少とも緩和する)を投与する場合もあります。
さらに栄養指導や、他の臓器にダメージがある場合は、その治療を行えるよう、専門の医療機関と連携していきます。

アルコールで悩まれている患者様、あるいはご家族の方がいらっしゃいましたら、適切な医療機関へのご紹介も致しますので、ぜひ一度、ご相談ください。