ADHD(注意欠陥/多動性障害)
について

ADHD(注意欠陥/多動性障害)のイメージ

ADHD(Attention-deficit/hyperactivity disorder)とは、集中力がないことなどによる「不注意」、落ち着きがない、自分の順番をまてないなどの「多動性・衝動性」の2つの特性を中心とした発達障害で、"注意欠陥・多動性障害"と訳されています。

こうした症状が7歳までにあらわれ、幼稚園や学校生活の様々な場面で、二つの特性からくる行動が確認されます。
学童期には3~7%程度の割合で存在すると言われ、男性は女性に比べて数倍多いことが報告されています。
ADHDの症状は、成人になっても持続することが多いといわれており、青年期には男性の低くなりますが、女性の割合は年齢を重ねても変わらない傾向にあります。

ADHD(注意欠陥/多動性障害)
の主な症状

ADHDの症状には「不注意」と「多動性・衝動性」のふたつがあります。

「不注意」は、勉強の課題や遊びなどに集中力が持続しなかったり、継続的に1つの物事に取り組めなかったりします。また勉強など学校生活でミスやなくし物が多い、上の空になってしまうなどの症状が見られます。
「多動性・衝動性」は、じっとしていることができず、絶えず動いてしまうもので、学校の授業を椅子に座って聞き続けることができない、貧乏ゆすりを繰り返すなどの行動があらわれます。また、行動の結果、何が起こるか考えず、突然道路に飛び出してしまったり、パッと思いついた言葉を発して他人を傷つけてしまったりすることもあります。

これら二つの症状の現れ方によって、「多動―衝動性優勢型」「不注意優勢型」「混合型」に分類されます。
成長につれて症状が軽くなる場合が多いと考えられていますが、不注意や衝動性の症状は、青年期や成人期まで続くものが約半数に上ると言われます。思春期以降は、こうした症状による対人関係や社会とのかかわりが上手くいかず、不安・うつ症状を合併する場合も見られます。

ADHD(注意欠陥/多動性障害)
の原因

ADHDの原因については、自閉症スペクトラム障害と同様、何らかの遺伝的要因が働いて脳に障害が生じていると考えられていますが、詳しいことは明らかになっていません。
環境的要因としては妊娠期間中における喫煙やアルコールの摂取、ある種の化学物質、分娩前後で生じた脳への障害などが挙げられていますが、これもその仕組みは明らかではありません。

現在ひとつの説として、脳内の物質の中で、ドーパミンやノルアドレナリンの機能が低下していることが報告されており、ドーパミンのはたらき方に関連する遺伝子の異常などがADHDの要因ではないかということが言われています。
これにより、物事を整理整頓したり論理的に考えたりする働きをし、注意を持続させたり行動などをコントロールさせたりする「前頭葉」の働きが弱くなって、発症するとされています。
ただ、これによってすべてのADHDの原因がすべて説明できるかどうかは、まだわかっていません。

ADHD(注意欠陥/多動性障害)
の治療

治療に関しても、自閉症スペクトラム障害などの発達障害と同様、ADHDの症状を持っている方が生活しやすい環境を作っていく「環境調整」が大切になります。
そして本人がその症状(特性)をよく理解し、上手に付き合っていくことを学ぶことで「行動変容の促進」をしていくことも重要で、順番を待つ、おもちゃを一緒に使う、といったことを、できたこと、できなかったことなどをフィードバックしつつ、焦らず丁寧に、根気よく教えていくことが必要です。

学童期以降は、環境調整や行動変容の促進をしても生活に支障をきたしてしまう場合など、必要に応じて薬物療法を行います。
主に脳を刺激し、脳内の神経伝達物質の不足を改善する働きのある治療薬を用います。