「五月病」と「適応障害」
五月病とは
当院が開院する5月は、新年度が始まり1ヶ月程の時期となります。新入学した学生さんや新社会人の方々に多いとされる「五月病」の時期と重なります。なかなか新しい環境に馴染めず、ストレスや緊張、不安、無気力などを感じることも多くなりがちですが、そのような精神的な状態を総称したものです。「五月病」は正式な医学用語ではありませんが、精神医学では「適応障害」というものが近い概念として考えられます。
適応障害とは
ある特定の状況や出来事(転職・転勤・異動・環境の変化・人間関係の変化・勤務状態の変化等)がストレスとなり、気分の落ち込み(抑うつ気分)や不安感など精神的な症状や行動に変化が現れて、社会生活に支障をきたす病気のことです。
世界保健機関の診断ガイドライン(ICD-10)では、原因となるストレスが生じてから1ヶ月以内に発症し、ストレス因子が解消してか6ヶ月以内に症状が改善するとされていますが、ストレス因子が継続した場合には長期間続くこともあるのが特徴です。適応障害の患者さんの4割程度がうつ病に移行してしまうというデータもあり、十分に注意が必要です。
よくある症状は?
抑うつ気分(気分が落ち込む、前向きになれない)、不安(些細なことが心配になったり、漠然と色々と考えてしまう)、怒り(普段は怒らないようなことに怒りを感じる)、焦り(いつも何かに追われている感じがする)や緊張(常に周囲に対して気疲れするほど配慮してしまう)などの情動面の症状や、多量飲酒や暴食、無断欠席、無謀な運転や喧嘩などの攻撃的な言動など行動面での症状がみられることもあります。
身体的な症状として、常に動悸がする、暑くないのに汗(冷や汗)をかく、常に心臓がドキドキする、地面が浮いている感じがする、ぐるぐるとめまいがする、音に敏感になる、胃がムカムカして吐き気がするなどの症状がみられることもあります。
治療法は?
適応障害の治療で最も重要なことは原因となるストレスの特定と軽減です。まずはどのようなことをストレスと感じているのかをじっくりとお聞きし、その上でどのような対処が必要かを検討することが必要です。場合によっては一時的に学校や仕事をお休みされることをお勧めすることもあります。職場の配置転換などが原因で発症される方も非常に多く、主治医として上司や産業医と連携し異動も含めた環境調整を行うことが有効な場合も多くあります。調整に時間がかかる場合には、「傷病手当金」などの制度も助けになることが多く、診断書をお書きすることもあります。また、著しい不眠や不安の症状が認められる場合には、対症療法としてお薬を処方することもあります。
いずれにしても患者さんや周囲の方ととよく話し合って対処法や治療方針を検討することが重要となります。
まとめ
「五月病かな?」と感じられている状態は、「適応障害」の可能性もあります。少しでも気になることがあったりや対処に悩まれている場合にはお気軽にご相談下さい。